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月別アーカイブ: 2025年9月

万寿農園の農園日誌~変遷~

皆さんこんにちは

万寿農園の更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

1|序章:畑の実から“設計できる作物”へ

トマトとピーマンは、家庭の定番から外食・惣菜・加工の柱へ。
量の時代 → 規格と歩留まり → データ経営 → レジリエンスとサステナブルへと進化してきました。


2|〜1970年代:露地主体・家族労働・“勘と経験”の時代

  • 栽培:露地・簡易トンネル。元肥・中耕・支柱・摘心が基本。

  • 防除:病害虫対策は経験依存、天候の当たり外れが収量を左右。

  • 流通:近隣市場へ“朝採りでドサッと”出荷。選果・規格は緩め。
    → キーワード:量の確保/天候勝負


3|1980〜1990年代:施設化・接ぎ木・規格の厳格化(均一と効率)

  • 施設・資材:ビニールハウス・マルチ・滴下潅水が普及。

  • 接ぎ木:根圏病害や連作障害に対応、安定収量へ。

  • 受粉・着果:トマトは振動・訪花昆虫、ピーマンは温度・肥料バランスの最適化で花落ち抑制

  • 流通:量販店台頭でサイズ・色・光沢・傷の基準が明確化、納期厳守が常態に。
    → キーワード:均一・納期・省力


4|2000年代:高設・養液・高ワイヤー(体感と歩留まりの時代)

  • 栽培体系:高設ベンチ/養液土耕・養液栽培、EC・pH管理が日常に。

  • 樹勢管理:高ワイヤー誘引、摘葉・摘果で果実サイズと着色を設計。

  • 品質設計:トマトは糖酸バランス、ピーマンは肉厚・直線性・肩張りを数値で管理。

  • 物流:予冷・パレット・バーコードで破損ロス低減
    → キーワード:歩留まり/味の設計/ロス削減


5|2010年代:ICT・天敵活用・直販多様化(レシピ経営)

  • 環境制御:温湿度・CO₂・日射・土壌水分をセンサーで可視化、昼夜温戦略の最適化。

  • IPM天敵・微生物資材で減農薬と収量安定を両立。

  • SKU戦略:ミニトマト・高糖度トマト、カラーピーマン・肉厚系など、用途別に細分化

  • 販路:契約・直販EC・惣菜・加工(ドライトマト、ソース、ピクルス)が並立。
    → キーワード:データ/多販路/ブランド


6|2020年代:高温・豪雨・人手不足へのレジリエンス(持続可能性の設計)

  • 気候対応:遮光・ミスト・換気経路、高温耐性・病害抵抗性の品種リレー。

  • 省力化:収穫台車・選別ライン・ビジョン選果、動画SOPで未経験者を即戦力化。

  • 衛生・エビデンス:簡易HACCP、異物・残留基準、コールドチェーンの徹底。

  • 環境:資材リサイクル、水・電力の原単位管理、CO₂施用の費用対効果見直し。
    → キーワード:レジリエンス/人材育成/サステナブル


7|“技術の肝”の変遷(現場の勘所)️

共通

  1. EC・pH×水分ストレス設計:味と歩留まりはここで決まる。

  2. 日射利用と温度の“振れ幅管理”:昼夜温、VPD、風の通り道。

  3. 花房・側枝の整理:着果数を決め、揃いをつくる。

  4. 予冷と梱包:収穫→予冷までのリードタイム短縮、角打ち防止の箱設計。

トマト寄り

  • 糖酸バランス:夜温・日射・仕上げ潅水の三位一体。

  • 奇形果・裂果対策:水分変動・Caバランス・日射の急変を抑える。

ピーマン寄り

  • 花落ち・着果障害:高温時は着果負荷を調整、EC上げ過ぎ注意

  • 曲がり・しわ対策:樹勢維持・収穫タイミング・肥大期の水分安定。


8|ビジネスモデルの変遷:卸一本から“多層の出口”へ

  • :市場出荷が中心。

  • :市場+契約(外食・惣菜・加工)+直販EC+観光農園+加工(ソース・ピクルス・ドライ)。

  • KPI:平均単価だけでなく、規格適合率・糖度/酸度(トマト)・曲がり/空洞率(ピーマン)・破損率・原単位(燃料/電力/水)・直販比率で全体最適へ。


9|“選ばれる農家”の運用テンプレ(コピペOK)

  1. 3プラン販売
    ベーシック(家庭用MIX)/セレクト(秀品中心・糖度レンジ提示)/プロユース(歩留まり保証・規格固定・定期便)。

  2. 品質ダッシュボード
    収量・規格比率・糖酸/糖度・曲がり/奇形率・破損率・レビュー/クレーム・原単位を週1枚に。

  3. SOP+動画(60–90秒)
    摘葉・誘引・収穫・選別・梱包・予冷を“誰でも同品質”に。

  4. 出口多層化表
    生鮮/加工/直販/業務用の代替先・合意規格・担当連絡先を整備。

  5. 端境期カレンダー
    作期分散・他産地連携・冷蔵/冷凍在庫で欠品ゼロを設計。


10|KPI(最小セット)

  • トマト:糖度/酸度(Brix/TA)/裂果率(%)/奇形果率(%)/階級比率

  • ピーマン:曲がり率(%)/肉厚レンジ適合率(%)/日焼け・しわ率(%)

  • 共通:収量(kg/㎡)/労働生産性(kg/人時)/破損・返品率(%)/原単位(kWh・m³/㎏)/直販比率(%)


11|現場の“やりがい”はこう変わった

  • 毎日が成果発表:列ごとに揃う果実、箱を開けた時の色と香り。

  • “現場の科学”の手応え:EC・温度・光・CO₂を組み合わせ、味や揃いが数字で返ってくる

  • 食卓と産業を支える誇り:家庭料理・惣菜・外食の裏側に自分の実がある。

  • チームで同品質:SOPとダッシュボードで、誰の列でも同じ品質に近づく。

  • 規格外も価値に:ソース・ドライ・カットでゼロロスへ挑戦。

  • 次世代へ渡せるOS:土・設備・販路・データという“農園のOS”を引き継げる。


12|100秒ストーリー(真夏日の前倒し)

猛暑予報で花落ちと裂果が心配。
前週のログを見ると夜温高め+仕上げ潅水が遅れ気味
遮光を10%強め、夜明け前の潅水を前倒し、ECを微調整して樹勢を締め、収穫後は予冷を15分短縮。
3日後、トマトは裂果率1/3、ピーマンは曲がり率−6pt

「今日のミネストローネ、味が濃いね」——数字と段取りが、食卓の笑顔に変わった。


13|明日からできるミニ改善 ✅

  • 予冷リードタイムを1日だけ全ロットで計測→動線を10分短縮。

  • EC・pHメーターの校正を月初ルーチン化。

  • **摘葉・誘引の写真SOP(3枚)**をハウス入口に掲示。

  • 規格外の即時出口表(加工・直販・寄付)を担当と価格ごとに整備。

  • 週1で糖度/曲がり・破損率のホワイトボードを更新→翌週の作業に反映。


まとめ ✨

トマト・ピーマンは、
露地と勘 → 施設×接ぎ木 → 養液×データ → レジリエンス×サステナブルへと進化。
これからの鍵は、EC・水分・温度の再現レシピ、予冷リードタイム短縮、多層の出口設計、SOP×ダッシュボード

今日の一歩は――“予冷時間の見える化”と“作業SOPの写真化”から。
小さな仕組み化が、“外れのない美味しさ”と選ばれ続ける産地
をつくります

 

 

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